明日の磐田戦にてデビューが濃厚な菊地からのメッセージが公表されました。
菊地直哉選手から大分トリニータのサポーター、全国の皆様へ
それを受けて2chをはじめ各所でいろんな意見が交わされています。
その議論の助けになれば、と菊地の事件について書かれた、おそらく唯一といっていいインタビュー記事を書き起こしてみました。サッカー批評に連載中のコラム「Hard After Hard 〜思い出したいことがあって〜」から、No.37(2008年1月発行)、No.38(2008年4月発行)に2回に渡って連載された、菊地の代理人の田邊伸明氏へのインタビューです。インタビュアーは漫画好きには有名な大泉実成さん。
事件の経緯については前半部分が詳しいので、前半の主要部分のみ書き起こしています。真実は菊地と被害者女性しか分かりませんが、ある程度の疑問や、世間で流れている噂がまったく見当違いの言いがかりだったりする事がわかると思います。
「田邊が責任をクラブになすりつけた恣意的なインタビューだ」と言う人もいますが、まずは読んでから各自で判断されてください。
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なぜ起きたのか
インタビュアーの「なぜこんな事が起こったのか?」の問いに、会社としての指導の不備を認めながらも、事件の予防は難しいと説明。「(事件でこれまでの努力や夢が遠のいてしまった事について)会社と契約選手といった関係ではなく、田邊さんの思いはどうなんでしょう」の問いに田邊氏が答えます。
※強調部分は鳥日。
田邊 それは残念です。残念だし、菊地の物事の考え方は甘いといわざるを得ない。今回分かったのは、(サッカーの)エリートあるがために、本来さまざまな経験や教育を受けるはずの環境に、彼があまりいなかったという事だと思います。(略)今回被害者の方の理解もあって、不起訴処分になった。そこで菊地はボランティア活動をしたり、うちの会社で働いたり、少年サッカー教室で指導したりした。そこで彼はいかに自分が世間知らずかということを知ったんですね。それに一番ショックを受けたのが菊地自身だった。今回、魔が差したのかもしれないし、いろんな条件が重なってこうなったと思うんだけれども、やはりどこかで、社会人としての要素を吸収することがないまま社会に出されちゃっているということは事実だと思う。これは菊地に限らず、スポーツ選手全員に言えることですが。
−なるほど
田邊 それともう一つは、示談してますから。示談の一つの条件として事件の話をしないという事があるんですね。だから事件の内容について、僕らも知らないことがたくさんある。ほんとは聞きたいですよ、ぶっちゃけ。だけど聞けないことがたくさんあるということなんです。
−事件については、報道で知ったものには異常だなと思えることがあります。逮捕に至ったきっかけというのが、被害者の女性の自転車の前かごに、菊地選手の財布が免許証入りで忘れられていたこと。で、それを警察に届けたと。しかし、通常の精神状態ではそんなところに財布を忘れるというのが考えられない。なぜそんな異常な精神状態になっていたのかということなんですよ。
田邊 知りたいですよね。僕も知りたい。けれどこれは事件の内容にかかわることだから、菊地は言っちゃいけない事になっている。だから僕も聞いてないです。
(後略)
事件後の対応
−この事件で数少ない救いだと思うのは、早期に被害者との間に示談が成立したことです。
田邊 奇跡だと言われました。
(事件が起こってからの経緯、菊地の当時の状況をを説明)
田邊 でね、今回のことで一番大切なのは、菊地が選手として復帰するということなんです。示談に至る過程の中でそれを被害者が望んでいたからこそ、示談が成立したわけですから。ただ、その過程で僕もいろいろ感じたことがあって、話したいことは沢山あるんです。クラブとの関係で言うと、この事件ではそれがすごく難しかった。何が難しかったか。今回クラブが正規式にアナウンスしたのは、三回だけなんです。まず「菊地選手が逮捕されました」。それから、二回目が「菊地選手の処分が確定しました」不起訴処分。三回目が、解雇したとき。この三回だけです。
逮捕された後に、うちの会社のホームページと菊地のブログに、菊地の謝罪文が載ったんですよ。ところがクラブは載せなかった。で、これはファンの人たちからね、死ぬほどメールが来ました。「クラブがまずホームページに載せるのが筋だろう」。
この謝罪文っていうのは、そもそもクラブから作って欲しいという要望があって作ったんですよ。
−ほう。
田邊 ところがなぜだかクラブはそれを掲載しなかった。
−うーん、磐田の意図がちょっと理解できないですね。どいう背景があったんでしょうか。
田邊 もうちょっと厳密に言うと、月曜日に掲載します、って言われたんですよ。ところが、「やっぱり掲載をやめることになりました」っていう連絡がメールできたんですよ。正確にいうと金曜の深夜に、弁護士が菊地の所に行って謝罪文を受け取ってきた。最初は日曜日にクラブがホームページにアップしようという話だったんですけど、土曜の夜に日曜日にはJリーグがあるので、月曜日にしますと連絡があった。そこで当然「じゃあクラブがアップしたらアップしよう」ということになった。ところが日曜日の夜にやっぱりやめるというメールが来てたんです。
−日曜日の夜だったからメールをチェックしていなかった。
田邊 月曜日は午前中から会議が入っていて、そのメールに気づかなかった。午後ならもうアップしてるだろうと思ってうちでもアップした。そしたらクラブではアップしてなかったんですよ。それでクラブにはえらい怒られたんですけど、そしてそれは確かに僕が軽率で悪かったんだけど、結果的にクラブは謝罪文を載せなかったんですよ。ファンからお叱りを受けましたよ。代理人がそこまでやんのか。まずはクラブがやるべきじゃないのかと。
−その議論は一時ネット上を騒がせてましたね。
田邊 だけどクラブは最後まで載せなかったんですよ。
−その理由がわからない。
だけど、僕らにしてみれば、これも結果論ですけど、示談が成立するために、弁護士が被害者と接触する必要があったわけですよ。でもそれが拒まれていた。これをどうすればいいのか考えた時に、菊地がいかに反省しているかということを何らかの形で被害者に伝える必要があった。
−謝罪の意志があることをきちんと示すことは、被害者感情を考えた時には重要ですね。それにしてもクラブの意図がわからない。
田邊 僕はクラブはちっとも悪いと思わないけど、クラブにしてみれば個々の選手よりもまずクラブを守らないといけないから。事件を起こしたのが選手であるのは事実だから。だから、クラブを守らなきゃいけないからそうなったのかなあ、と。
(後略)
起こしたことの重み
−今回はネットを騒がしたいくつかの議論の一つに、警察で、菊地選手が直接会見してお詫びすべきだったという意見がありました。
田邊 クラブで菊地が会見すべきだという意見もありましたよね。
−この辺は菊地選手サイドからするとどうだったのか。マスコミに注目されるような大事にしたくなかったのか。
田邊 できれば謝罪会見をしたかった。
−そうなんですか。
田邊 ファンをはじめ沢山の人たちに迷惑をかけたから当然ですよね。でも示談の内容との関係で会見はできないと弁護士から言われました。
−被害者の立場に立てば、事件が注目を浴びるのは身を切るようにつらいでしょうからね。もうひとつ問題になったのは9月以降、ドイツのクラブに練習参加している事です。そもそもどういう経緯でドイツへ行くことになったんですか。
田邊 プロセスとしては、今後菊地がサッカーを職業として生きていくのかという問題がまずあった。それに対する決断が彼には必要だった。それにえらい時間がかかったんです。で、自分はサッカー選手としてやっていくんだ、という決断が出たのは、8月の終わりぐらいだった。
−時間がかかったというのは、例えば今回の事件を起こしたことで、どこに行っても「ああ、あれが淫行を起こした菊地だ」と言われることに対する…
田邊 というよりも、自分がサッカーを続けていいのか、という葛藤があった。だから、ボランティアをしながら、自分の時間を長く過ごしたんです。(略)自分がプロサッカー選手として起こしたことの重み、コレを時間が経てばたつほど感じたんだと思うんですよ。報道の大きさとか。
−最終的にサッカーを続けるという決断に至った理由というのは何なんでしょうか。
田邊 やはり自分にはサッカーしかないと思ったんでしょうね。それと、そもそもどうして示談が成立したかを考えたんでしょう。それからスポーツジムに通うようになった。それまで全然体を動かしてなかったですから。
−すると8月ごろからスポーツジムに通うようになった。
田邊 次は12ヶ月後の復帰に向けてボールを扱っていかないといけないわけですよ。菊地は実家が静岡ですから、学校の先輩とかで指導者になっている人が沢山いて、うちのチームで練習しないか、という声を沢山かけていただいた。でも、集中して出来ないんですよ、残念なことに。
−静岡県内ではトップニュースになりましたからね。
田邊 じゃあチームで練習するのに一番いいのはどこかといった時に、外国が一番自然な関係で受け入れられる、という結論になった。
−それは本人との話し合いの中で出てきたということですか。
田邊 そうです。もちろん。静かな環境でという事が重要だった。
−本人が知られていないところで、ということですね。
田邊 もう一つは、お前本当にやるんだな、という、その覚悟が見たかったというのがあります。プロとしてやっていくのはただでさえ大変です。ところがその上に菊地には背負っていくものがあるのね、っていうのを、自覚させたかった。でも、向こうに行ってすぐ、もう新聞に出ちゃって、それが日本にも出て。
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以下、ドイツに行ってからの事。ドイツデビューの経緯などが後半に続きます。
このインタビューを読んでみて思ったのは、「菊地は確かに間違いを起こした。それは未来永劫消えない罪だ。でも、だからといって、これからの菊地を否定する理由が、俺にあるのか?」という事です。性犯罪は再犯性が非常に高い犯罪です。でも、これからの菊地を否定する事は、性犯罪者だけでなく、一度罪を犯した人すべての未来を否定する事ではないでしょうか。
個人が菊地をどう思おうが、どう言おうが自由だと思います。だからといって、菊地の未来を閉ざすような行動を起こしたり、彼の未来を信じる人たちを貶めたりする事がはたして正義なのでしょうか?
いろんなネット上の意見でこんなのがありました。「子供にどう説明すればいいのか。子供が観に行く試合に犯罪者が出ている事をどう言えばいいのか」。
何馬鹿な事言ってるんだ。お前は子供に一度罪を犯した人間は、未来永劫表舞台に出てはいけないと教えるのか。「一度でも犯罪を犯せば、お父さんもお母さんも、先生も友達もみんなお前のことを一生犯罪者として後ろ指を指すぞ。今お父さんが菊地選手にしているように」と。
「あの選手は昔、女の人を傷つけるとても悪いことをした。でも今は昔を反省して、一生懸命サッカーで頑張ってるんだよ。罪を犯すのはとても悪いことだけど、一度犯した罪を反省して、償いながら一生懸命生きていくのはもっと大切な事なんだよ」と言えばいいじゃないか。なぜそれが言えないんだ。
人は変わる事ができる動物です。後悔と反省ができる生き物です。そして、僕たちの菊地への気持も、時と共に変わる事があると俺は思います。それがどう変わるかは、菊地のこれからの行動しだいです。菊地にはそれを肝に銘じて、サッカー選手として、人として、生き様を見せて欲しいと思います。
このインタビューにつてい書かれたブログのエントリー
●Wireds 〜浦和レッズをウイイレ的に見るブログ : 「消えたサッカー選手・菊地直哉」
●NK.com : 『サッカー批評』(byはまねえ)
コメント (7)
投稿者: すがーり | 2009年09月13日 00:03
投稿者: r | 2009年09月13日 02:37
投稿者: 通りすがり | 2009年09月13日 23:17
投稿者: 匿名 | 2009年09月15日 02:39
投稿者: A | 2009年09月15日 10:31
投稿者: 匿名 | 2009年09月15日 12:16
投稿者: tokumei | 2010年04月22日 13:51